INTERVIEW

看護師インタビュー

北海道・東北で初めて開講した感染管理認定看護師教育課程で学ぶ

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感染管理認定看護師教育課程(B課程)受講生

髙﨑 順子さん

佐藤 愛望さん

和田祐加里さん

Profile

新型コロナウイルス感染症の拡大以降、これまで以上に感染症対策は注目されるようになった。令和5年9月、郡山市の「公益財団法人星総合病院 高度専門教育センター」で開講した「感染管理認定看護師教育課程(B課程)」には県内外から定員の2倍を超える応募があり、選抜された17人が学び始めている。県内各地から通っている看護職3人に話を聞いた(写真左から髙﨑順子さん、佐藤愛望さん、和田祐加里さん)。

  • コロナ禍に頼もしい存在だった「感染管理認定看護師」

    ーーー今回、挑戦しようと思ったきっかけを教えてください。

    高﨑 私は常磐病院(いわき市)に所属しています。手術室の経験から、滅菌などを行う中央材料室の業務に、感染管理の知識を役立てたいと思いました。また、勤務する病院でコロナウイルスのクラスターが起きた際に、当院の感染管理認定看護師が的確かつ具体的な指示を出していて「こんなふうに専門性を高めるキャリアアップもあるんだな」と思い、挑戦するきっかけになりました。

    佐藤 私もきっかけはコロナ禍です。勤務する北福島医療センター(伊達市)にコロナ病棟ができて、2年にわたり看護してきました。「これでいいのだろうか?」と迷ってしまうことが多い中、感染管理認定看護師が的確な指示を出してくれたことで安心して仕事を進めることができました。これまでは県外の教育機関でしか資格が取れませんでしたが、県内に開講すると聞いて家族や職場に相談して挑戦しました。

    和田 私は公立岩瀬病院(須賀川市)の看護師で感染症専門チームと病棟看護師をつなぐリンクスタッフをしていました。2020年にコロナ病棟に異動になり、当院の感染管理認定看護師に憧れと尊敬の念を抱きました。感染管理上、面会など患者さんやその家族の思いを叶えられないことが多く、倫理的なジレンマに悩んでいると、感染管理認定看護師が感染症対策の最前線に立ちながら、看護職の相談を聞いてくれたので、納得して看護をすることができました。

     

    ーーーどんな感染管理認定看護師になりたいですか?

    高﨑 感染症に関して頼りになる存在になりたいです。すでに感染管理認定看護師がいるので、複数いるメリットを活かして、なんらかの新たな取り組みができればいいと思っています。修了後は、中央材料室での洗浄・滅菌についてシステム改善に取り組んだり、グループ内の施設やクリニックの感染ラウンドや教育にも関わっていこうと思っています。

    佐藤 感染管理認定看護師の専門性を発揮するためには多職種と連携が重要です。素直で謙虚な姿勢をもちながら、現場の声を聴ける看護職として、あらゆる人と信頼関係を築いていければと思っています。それから、地域を感染から守ることが病院を感染から守ることにもつながるので、子どもからお年寄りまで感染予防について興味をもってもらえるような地域での活動をしていきたいと考えています。

    和田 私が所属している公立岩瀬病院は災害拠点病院です。自然災害だけでなく、感染症の応援派遣体制があるので、今回の学びを活かして災害における感染対策対応の仕組みを構築していきたいと思っています。また、本教育課程でできる県内の仲間や先生方とのネットワークは今後の大きな支えになるはずです。県内で学ぶ利点を最大限に活用して、地域の感染対策強化に貢献できるようになりたいです。

  • 職場の上司や家族の理解を得てからチャレンジして

    ーーー受験にあたり、どのような勉強をしましたか?

    高﨑 私は参考書を1冊ひたすらやり続けました。思いのほか苦労したのが願書作成です。「実績報告」「志願理由」を自分の経験を踏まえてどう表現したらいいのか悩んで、相当時間がかかりました。相談にのってくれた当院の感染管理認定看護師や上司に感謝しています。これから受験する方は早めの準備をお勧めしたいと思います。

    佐藤 私は業務中に感染症に関して疑問に感じたことは、必ず調べるようにしていました。さらに近年変更点があった様々なガイドラインを重点的にチェックしました。子どもが小さいので受験勉強は時間の確保が大変でした。寝かしつける時に、ついつい眠ってしまうので、朝早く起きて勉強をしたり、夜勤の休憩時間など少しでも時間があれば参考書を開くように心がけていました。

    和田 受験前は「この時間は勉強する」と決めて、図書館などで勉強をしました。小論文や面接は、上司に繰り返し見てもらいました。特に面接に自信がなかったので声の出し方から、自分の思いをきちんと伝えられる言葉遣いまで、いろいろと指導してもらいました。自施設のバックアップは心強く、心の支えになりました。

    ーーー受験を目指している人へメッセージをお願いします。

    高﨑 今回、県内で開講したことで迷っていた人も挑戦しやすくなったと思いますが、通うのには覚悟が必要です。例えば、リンクナースとして経験を積みながら感染に関わり続け、子育てが落ち着いたら受講する形でもいいと思うので、焦らずに感染症の勉強を続けて、いつかはぜひ一緒に取り組みましょうと伝えたいですね。

    佐藤 受験を乗り越えた後も子どもの送り迎えなど生活スタイルを変えなければ勉強の時間を確保できません。資格を取得して終わりではなく、その後の活動も見据えた上で、事前に上司や家族と相談し理解をしてもらうことが大切だと思います。自分自身のキャリアプランについて十分に話し合いをすることをお勧めします。

    和田 私は目的のある挑戦がとても楽しいと感じています。これまでは、自分が何を学びたいのか迷い、分野を絞らずに研修に参加していたこともありました。今は、感染管理認定看護師という目的に向かって学んでいることがすべて今後の活動に生きてくることを確信しています。目的をもち学ぶ楽しさを、多くの看護職と共有できるとうれしいです。

取材者の感想

病院で働きながらも高い志を持って学習を続け、感染管理認定看護師教育課程に合格した3人の看護師さんたち。新型コロナウイルス感染症だけではなく、抗生物質の効かない耐性菌のことなど「これから取り組んでみたい感染症対策」について聞かせてくれました。「もっと学びたい」「正しい知識を得てよりよい医療につなげたい」という意欲が、地域の人たちを感染症から守ってくれていると改めて感じました。まずはうがい、手洗いをしっかり。自分ができることを続けていきます。

ライター 齋藤真弓