INTERVIEW

看護師インタビュー

安心して暮らせる地域のため保健師ができること

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浪江町役場 健康保険課 健康係 保健師

三瓶 元子さん

山本 梨香さん

Profile

今年、浪江町に新規採用された保健師二人は共に1999年の浪江町生まれ。東日本大震災で避難生活を過ごした後、それぞれ県外の学校で資格を取得して、ふるさとに戻ってきた。働き始めて3ヶ月になった今、仕事を通して考えていることを教えてもらった。

  • 子どもから大人まで町民の健康を日常的に支える

    ーーー就職先として浪江町を選んだのはなぜですか?

    (三瓶)避難生活中も浪江町に一時帰宅するたびに「やっぱり浜通りの気候はいいな」と実感していました。もともと地元なので浪江町で働くことに全く抵抗はありませんでした。

    (山本)私も「働くなら過ごしやすい浜通りで」と思っていました。ほとんど雪が降らないので「雪道を運転しなくていい」という理由もありました。

     

    ーーー保健師さんは地域の人々の健康を守るための専門職ですが、具体的に現在、どのようなお仕事をされているのでしょうか。

    (三瓶)妊娠届けの受理に始まり、出産後のお母さんと赤ちゃんの健康状態を確認するための自宅訪問、乳幼児健康診査で成長を見守っています。現在は、経験が豊富な先輩保健師について仕事をしていて、町民のみなさんからも多くを教えてもらっています。

    (山本)私は、町民の方に運動習慣などを身につけてもらう健康教室の企画に先輩職員と一緒に取り組んでいます。現在、浪江町には診療所はありますが、病院がありません。日常的な取り組みで、病気になるのを防ぎ、健康で楽しく暮らせる期間を長くできないかを模索しています。

     

    ーーーどうして保健師を目指したのですか?

    (三瓶)実は高校で「生物」を選択したのがきっかけでした。「生物」を選択したクラスメイトの多くが看護師を目指していたので、その影響を受けて私も看護大学に進学しました。そして、進学先は看護師に加えて保健師の資格も取得できる大学だったこともあり、みんなと一緒に勉強をがんばって保健師資格も取得しました。

    (山本)地域の人に継続して関わる保健師の仕事に魅力を感じていました。私は去年まで病院で看護師をしていたので、病気になってからの治療がもちろん大事だと思っていますが、高齢者が多い浪江町では「病気になる前に対策できることがあるのではないか?」という思いがあり、既に取得していた保健師資格を活かして、浪江町の保健師を目指しました。

  • 信頼される存在になるために一歩一歩着実に

    ーーーどんな保健師になりたいと思いますか?

    (三瓶)毎日が勉強で無我夢中です。出産、子育てしているお母さんの大変さを先輩保健師から教えてもらって「本当にすごいな」と尊敬するようになりました。今の自分にできることは、分からないことはそのままにせず、必ず調べたり相談して一つひとつ解決していくことです。そういったことを積み重ねて、住民の方々が安心して暮らせる地域づくりに貢献できる保健師になりたいと思います。

    (山本)自治体の保健師は、赤ちゃんから高齢者まであらゆる世代の町民の人生に関わることができます。先輩の保健師を見ていると、ちょっとした会話から地域の人に信頼されている様子が伝わってきて「私もあんなふうになりたい」と憧れます。役場に来た町民の方が、「ちょっと顔を見せに来たよ」と気軽に声をかけてくれるような存在になりたいです。

    ーーーこれから保健師や看護職を目指す人にメッセージをお願いします。

    (三瓶)進路のこと、勉強のこと、いろんなタイミングで迷うことはたくさんあると思います。すべて最終的に決めるのは自分ですが、一人で抱え込まないことが大事です。学生時代、難しい課題も意見を出し合っていくことで解決していくことが何度もありました。働き始めてからも、私は自分から相談しに行くことを心がけています。

    (山本)浪江町は今年3月末に避難指示が解除されましたが、「医療機関が充実していないため戻りたいが戻れない」という住民の声が聞こえてきます。地域の人たちの健康を支えてくれる医療従事者が増えれば、帰還に前向きになる人が増えるのではないかなと思います。浜通りは降雪が少なく過ごしやすくていいところです。「ぜひ、浪江町で一緒に働きましょう」と伝えたいです。

取材者の感想

看護師資格を取得した上で、上位資格である保健師の国家試験にも合格したお二人。「ゆりかごから墓場まで」と言われるように、生まれたての赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代の人たちの健康を支えていく存在です。「地域のために何ができるか」を真摯に話す二人の言葉は頼もしく、次の世代の「ふるさとへの愛」も育んでくれそうな気がしました。

ライター 齋藤真弓