INTERVIEW

看護師インタビュー

患者さんから信頼される看護師になるために

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公立相馬総合病院 看護師

深野 実玖さん

フコウノ ミク

Profile

1997年南相馬市生まれ。相馬高校を卒業後、相馬看護専門学校に進学。2019年に公立相馬総合病院に入職し外科・泌尿器科の混合病棟に勤務している。

  • 後輩に「地元の学校がいいよ」と勧める理由

    東日本大震災が起きた10年前、私は中学1年生でした。以前から「人を助ける仕事に就きたい」と思っていて、「看護の仕事」は選択肢にはありました。震災後、ずっと地元では看護師不足がニュース等で取り上げられていましたし、自分がこれから生きていく上で必要な身体の知識を得られたり、身近な人たちの健康を支えることができそうだなと考え、看護の道を選びました。

    実を言うと、第一志望の大学受験が残念な結果に終わり、地元の看護学校に通うことになったのですが、これは結果的に良かったと思っています。看護の勉強はとても忙しく、アルバイトの時間が確保できません。私は親元から通うことで金銭面の心配をせずに勉強に専念できました。家族の支えがないと乗り越えられなかったと思います。この経験から、後輩に進路を相談された時には「絶対に地元の方がいいよ」と勧めています。

    当院は実習で来たことがあるので建物の構造を把握していましたし、顔見知りの職員も多く、就職後もすんなり馴染むことができました。とはいえ、最初は覚えることが多くて毎日クタクタに疲れてしまって早めに就寝していたので、実家暮らしで家族の支えがあったのは助かりました。

  • 最期まで必ずある「希望」を受け止めた看護を

    私は「学ぶ」ことが好きなので、今後は何年かかけて複数の科で看護業務を経験したら、何か専門的な分野を掘り下げてみたいと思っています。現時点で関心があるのは「緩和ケア」です。

    当院では、入職後3年間「事例研究 」を行います。2年目の今年度は「終末期」をテーマにしました。人が死を受け入れるまでには、5つのプロセス(否認、怒り、取り引き、抑うつ、受容)があると言われていて、各段階でいかに患者さんの希望に気づき支援できるか、ある患者さんの事例を通して研究しました。少しずつ身体が動かなくなって寝たきりになっても患者さんには必ず「ささやかな希望」があります。例えば、窓の外を見て「きれいだな」とつぶやいた言葉を受け取って一緒に外に出てみたり、会話の中で食べられそうなものを探したりしながら、関わりを続けたところ、患者さん、そして家族にとっても、いい最期を迎えることができました。

    気持ちをきちんと表現できる患者さんばかりではありません。「大丈夫ですか?」と聞いた時に「大丈夫」と返ってきたらそのまま通り過ぎてしまいがちですが、どんなに業務が忙しくても、患者さんの心に寄り添い言葉に耳を傾ける「信頼される看護師」になりたいと思います。

取材者の感想

休みの日は、「バスケットボールなどのスポーツで体力づくりをしている」という深野さん。夏は週に何度も鹿狼山に登り、山頂で風を浴びリフレッシュしているそうです。今時のメイクやおしゃれを楽しんで仕事以外も満喫している様子ですが、落ち込んでいる時に一番効き目があるのは患者さんからの「ありがとう」という言葉。「見返りを求めているわけではないですが、こういうことのために私はがんばっているんだと思う」と話す笑顔が輝いていました。「人を助ける仕事に」と看護師を目指した頃から変わらない気持ちが、今も深野さんを支えているのだろうなと想像できました。

ライター 齋藤真弓
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