奨学金制度で叶えた夢自分に誇れる看護師に
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医療法人 相雲会 小野田病院 第一病棟 看護師
林 由佳里さん
ハヤシ ユカリ
Profile
1996年相馬市生まれ。相馬東高校から喜多方准看護高等専修学校を経て福島県立総合衛生学院に進学し、看護師資格を取得。2019年より小野田病院に入職、一般病棟・外科チームで活躍中。
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看護師は中学2年からの目標だった
「看護師になりたい」と思うようになったのは、中学2年生の時です。父ががんで亡くなったことが大きなきっかけだと思っています。父が入院していた病院で、最期に父の身体を拭かせてもらったことや、看護師が家族に思いやりのある言葉をかけてくれたことが心に残りました。
私が看護師になることで、母を安心させてあげたい気持ちもありました。「ひとり親家庭になったせいで進学させられなかった」と引け目を感じてほしくはなかったのです。当時、震災の影響で浜通りの双葉准看護学院が休校中だったので、喜多方にある喜多方准看護高等専修学校に進学。授業や実習を通して看護を知るほどにもっと勉強したくなり、卒業後はさらに進学することにしました。
夢を諦めずに済んだのは、奨学金制度があったからです。福島県立総合衛生学院で学んだ2年は、学業が忙しくて、アルバイトに時間を割くことができず奨学金でやりくりしました。テキストを買う時も厳選して、国家試験対策では二冊の問題集だけをひたすら解いていました。わからない問題が出てきたら教科書で確認して理解を徹底して深めることを繰り返し、無事に合格。この経験から「自分の努力次第なんだな、置かれた環境でベストを尽くすことが大切だな」と実感しました。
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明日が来るのは「当たり前じゃない」から
私はそれほど真面目な人間ではありません。勉強がきつくて「看護師は向いてないかも」と思う日もありました。そんな時に励まされたのが、総合衛生学院の先生に言われた「あなた達の目指している道は間違っていない」という言葉です。先生は県立医大から講師としてきていた看護師で、「私自身が長くこの仕事をしてきたけれども、看護師という選択は正しかったとずっと思っている」と確信のある口調で話してくれたので、迷いが消えて前を向くことができました。夢が叶って看護師になった今、大変なことがあっても「自分に誇れる仕事に就けた」と思っています。
10年前の東日本大震災では、津波で身近な人も亡くなりました。その時に「生きていること、明日が来ることは当たり前じゃない」と痛感しました。だから「1日1日を大切に生きたい」という思いが常にあります。私にとっての1日と同じように、患者さんの1日も大切です。寝たきりの患者さんの病室で、毎朝カーテンを開けて「おはようございます」と声をかけて口腔ケアをするような一つひとつの看護を大切にしながら、職場の先輩から多くを学んでいきたいと思っています。
取材者の感想
はにかむような笑顔で、ふんわりやさしい空気を周囲に漂わせている林さん。しかし、取材が進むほどに感じたのは、彼女の「意志の強さ」です。「友達に教えてもらったのですが、言霊(ことだま)っていうくらいで、目標があったら積極的に口に出したり、ノートに書き出したりすると気持ちが強くなれるので、実践しています」と教えてくれました。今の目標は、「患者さんが困ったとき、つらい時に顔が浮かぶような看護師になること」。これから先、優しさと芯の強さを兼ね備えた看護師として成長していく林さんの姿が目に浮かびました。
ライター 齋藤真弓