INTERVIEW

看護師インタビュー

認定看護師発信の連携であらゆる院内感染を防ぐ

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公立相馬総合病院 看護部副主任 認定感染制御実践看護師

荒 雅子さん

アラ マサコ

Profile

1972年相馬市生まれ。高校卒業後、公立相馬総合病院附属准看護学院(1999年に閉校)を経て福島県立総合衛生学院看護学科に進学し看護師資格を取得。1994年、公立相馬総合病院に入職。昨年、東京医療保健大学感染制御学教育研究センターで履修し認定感染制御実践看護師になった。

  • 断水時も感染症リスクを最小限に抑える

    今年10月中旬、台風19号の影響により相馬市の周辺は1週間ほど断水しました。当院も例外ではなく、自衛隊の給水支援でしのぎましたが、改めて病院の職員で断水時の衛生管理についての情報を共有しました。アルコール消毒は芽胞形成菌や一部のウイルスに対して効果が低いので、手指衛生を保つには手袋を二重につけることが有効です。また、トイレを流す水が確保できないために、洋式トイレもしくはポータブルトイレに黒いビニール袋をかけて消臭用のポリマーを入れ、排泄物とペーパーを入れるように準備してもらいました。

    東日本大震災でも水不足に悩まされましたが、その時には何が正解なのか分からず途方に暮れたのを思い出します。いまだにインターネットの情報は玉石混淆で、非常時に間違った方法をとることは絶対に避けなければいけません。昨年11月に私は「認定感染制御実践看護師」を取得していたので、今回の水害でその知識を大いに活かすことができました。認定取得の養成校で担当だった菅原えりさ教授は災害看護に力を入れていて、災害時の感染対策や医療職への指導、地域での実践活動などを学び納得できる知識と技術を身につけることができました。それを持ち帰って、エビデンス(根拠)のある方法を伝えることができたことにホッとしています。

  • 誰かの役に立てること、頼りにされることが原動力

    私が看護師になったのは「誰かの役に立ちたい」との思いからです。毎回ではありませんが、ケアによって患者さんの病状が改善すると報われた気持ちになり、看護の仕事を続けていく力になってきました。内科、外科、泌尿器科、整形外科、手術室などで経験を積み、いくらか自信はついてきたのですが、手術室などでの感染症対策については「本当にこれでいいのだろうか」と常に迷いがあったので、看護部長に認定取得を勧められた時は、迷わずに行くことを希望しました。高レベルの6ヵ月の授業を履修した後は、他県の病院と情報共有ができるようになりましたし、年に1回フォローアップ研修を受けることで最新の知識が更新できるようになりました。

    昨年からは、小児科病棟の三交代勤務と平行して感染制御実践看護師の仕事もしています。感染に関することで「頼りにされている」と実感する機会が増えてきたので、問い合わせには誠実に、迅速に対応するようにしています。

    感染症対策は絶対に一人ではできません。看護師だけではなく、各職種の協力体制があるのが、当院のなによりの強みです。各職種の立場から意見を出し合って、当院に一番あったやり方でよりよい医療の実現につなげていきたいと思っています。

取材者の感想

取材した10月21日は、ようやく相馬市内の断水が解除され、水質検査の結果待ちというタイミング。大変な状況にも関わらず「病院までの道路は危なくなかったですか?」と取材者を気遣ってくれた荒さんの対応には、本当に頭が下がりました。

感染症対策は、「針刺し事故」「ワクチン接種」など幅広い内容が含まれ、患者さんだけでなく医療従事者を守ることにもつながります。荒さんは「課題は山積み。これから自分がどこまでやれるか分からないけれども、一つずつ解決していきたい」と言います。感染制御の今後について話す時、いっそう目が輝く荒さんを見て「本当にこの仕事が好きなんだな」と感じました。

ライター 齋藤真弓
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