INTERVIEW

看護師インタビュー

フライトナースとして相双地域に安心を届ける

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福島県ふたば医療センター附属病院 多目的医療用ヘリナース

西尾 照美さん

ニシオ テルミ

Profile

1978年双葉町生まれ。高校卒業後、公立双葉准看護学院から茨城県内の看護専門学校に進学し、看護師に。2001年に双葉厚生病院に入職。震災による病院閉鎖で2011年から系列の白河厚生総合病院に移り、救急外来などを担当した。2018年4月より現職。

  • 患者搬送のための「多目的医療用ヘリ」に同乗

    双葉地域の二次救急を担う当院では、2018年10月から多目的医療用ヘリを運航しています。搬送者の重症度はドクターヘリより低いですが、搬送中に患者さんが急変することもあるので、同乗するフライトナースは緊急時に対応できる医療的な知識と技術が必要です。

    私は、2018年4月に入職してから、DMAT(災害派遣医療チーム)やBLS(心肺停止または呼吸停止に対する一次救命処置)などの資格を取得させてもらいました。また、ドクターヘリの講習会に参加させてもらい、自分のスキルアップにつながり、多くのことを学ぶことができる職場だと実感しています。

    東日本大震災時、私は双葉厚生病院に勤務していました。手術室で患者さんに麻酔をかけようとした瞬間に大きな揺れが来て、余震の合間に小さなライトを照らして手術をしました。その後は津波にのまれた人も次々運ばれて来て、誤嚥(ごえん)で挿管している患者さんがいても医療機材が足りない状況になり、病院に「このまま患者さんを置いておくことはできない」、しかし「道路が陥没していたりして、すぐには搬送できない」というジレンマに陥っていました。そこに現れて搬送を手伝ってくれたのが、DMATとドクターヘリでした。

  • 「大変でしたね」の一言で自分の状況に気づいた

    その時、ヘリから降りてきた看護師さんが、最初に私に向かって「大変でしたね」と声をかけてくれました。私は看護師として「患者さん第一」が当然だと思っていたので、ずっと自分のことを考える余裕はなく「あぁ、私も大変だったんだな」とここで初めて自覚することができました。その看護師さんの名前も分からないのですが、「私もあんなふうに周りの人に配慮できる人になりたい」と強く思い、現在も目標にしています。

    災害時でなくても、救急搬送された時には付き添いの家族も不安です。そこで私は、患者さんだけでなく、その家族にもなるべく声をかけ、安心してもらえるように心がけています。また、震災の時にDMATのチームワークを目の当たりにして、協力することでこそ、よりよい医療が提供できるのだと改めて実感しました。私が一人で出来ることは限られています。医師、放射線科、検査科のスタッフ、看護師他、医療に関わるすべての人がしっかりコミュニケーションし連携するのが大切なのだと思います。ふと、「じっくり患者さんに向き合える療養型病棟の看護師もいいなぁ」という考えがよぎることもありますが、今はまだ精一杯、自分に与えられた役割を果たしていくつもりです。

取材者の感想

多目的医療用ヘリは、ふたば医療センターと福島県立医大病院の間だけではなく、南相馬市やいわき市の病院間の患者搬送にも利用されています。365日対応できるように6人のフライトナースが交代で勤務しており、西尾さんはその一人です。西尾さんは「ずっとやりたいと言っていたフライトナースの夢を叶えた時、弟から『姉ちゃんすごい!』と言われたのが何よりうれしかった」と教えてくれました。次の夢は、「『西尾さんみたいな看護師になりたい』と後輩から言われること」。目を輝かせて仕事のことを話す様子から、その夢が叶う日は遠くないと確信しました。

ライター 齋藤真弓
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