INTERVIEW

看護師インタビュー

「和の心」をもって寄り添い続ける看護を

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公益財団法人 金森和心会 雲雀ヶ丘病院 総看護師長

鎌田 宏さん

カマダ ヒロシ

Profile

昭和46年生まれ。地元の高校を卒業後、雲雀ヶ丘病院で働きながら公立双葉准看護学院で資格を取得。30代後半に通信教育で学び、正看護師の資格を得た。平成25年より現職。精神科の看護職として25年以上のキャリアをもつ。

  • 看護師の約半数が男性スタッフ

    当院は、昭和31年に相双地域で初めて開設された精神科の病院です。当初の70床から昭和52年には4病棟254床に拡大し、50年以上精神科基幹病院として地域医療を担ってきました。

    東日本大震災では、建物などの設備に大きな被害はありませんでした。しかし、当院は原発から30キロ圏内にあり、避難等対象区域(旧緊急時避難準備区域)に指定されたことから、全ての入院患者さんの転院を行いました。当時約120人ほど働いていた看護職もほとんどが市外に避難し、一時的に病院の全機能を停止したのです。

    外来に限り再開したのが平成23年6月。翌年1月には急性期病床(60床)と認知症病棟(60床)の2病棟を開けましたが、スタッフ不足などにより平成25年11月以降は1病棟(60床)のみ稼働している状況です。

    現在は、正看護師13名と准看護師14名、看護補助者10名が働いています。特徴的なのは、看護職員(正・准)の資格保持者のうち13名が男性であることです。夜勤には必ず2名の男性看護職員が入るようにシフト調整をしますので、子育て中の女性看護職にとっては働きやすい環境だと思います。また、夜勤と日勤帯の業務内容をしっかり分けることで、「定時で帰れる」仕組みをつくってきました。出産や育児を理由とする退職はないのですが、ここのところベテランの看護職員が「両親の介護」などをきっかけに退職することが増え、人材確保の難しさに拍車をかけています。

    人手が足りないことから「個別に研修に行く時間が取れない」のですが、外部の講師に来てもらったり、薬剤師や精神保健福祉士から話を聞くなど、年間を通して新しい知識を学べる機会を設ける工夫もしています。

     

  • 福島原発以北で、相双地域唯一の精神科病院として

    当院には、認知症、統合失調症、アルコール依存症、うつ、双極性障害など、様々な病気の方がいらっしゃいます。高齢化が急速に進むなかで認知症の患者さんが増え、また震災関連で「心の病」をわずらう方も少なくありません。

    「病院から地域へ」・・・精神科医療は変わりつつあります。その実現を目指して、病状が安定した患者さんは当法人のグループホームに移ることもありますが、残念ながらその受け皿が足りません。若い世代が減り続ける南相馬市は「在宅」で患者さんを支える地域の力は圧倒的に不足しており、長期間の入院を余儀なくされるケースが多いのです。

    そういった中で病院の看護職員は、患者さんと適切なコミュニケーションを取りながら日々信頼関係を築いていくことが大事です。治療を支える基礎は、「和の心 明るく 優しく 温かく」という当法人の理念にあります。

    当院は福島原発以北で、相双地域で唯一稼動している精神科病院です。患者さんが安心して心を癒し、一日も早く社会復帰できるように願いながら、スタッフ全員がチームの一員として連携し、使命感をもって業務に取り組んでいます。

    精神科で働いた経験がない方も、もし関心があればぜひ来てもらいたいと思います。患者さんを「和の心」をもって癒すために、一緒に働いていける人を心から歓迎します。

取材者の感想

鎌田さんが正看護師資格を取得したのは30歳後半の時。忙しい業務の合間を縫って通信教育を受けました。同時期に地域で受講していた人たちと連絡を取り合いながら、励まし合い、時には一緒に勉強したこともあったそうです。

その時点で20年近く働いてきた「看護」を体系的に学ぶことで見えたのは、「患者さんに寄り添う大切さ」でした。「看護の本質、根本が精神科にあると改めて感じました」と鎌田さん。

「患者さんにとって退院は終わりではなくて、その後の生活も見通していかなければなりません。それだけに責任は重いですが、患者さんが快方に向かった時のうれしさや達成感は大きいものです」と精神科ならではのやりがいを教えてくれました。

鎌田さんの出身校である公立双葉准看護学院がこの春から南相馬市で再開します。また、平成30年度からは、准看護師が通信制で正看護師の資格を取るのに必要だった就業経験年数が7年(従来は10年)に短縮されます。さまざまな形で、看護職として活躍する人を応援する仕組みが広がっていることを、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと思います。

地域の看護師を目指している方達に鎌田さんが伝えているのは、「自分のやりたい仕事を選び、長く続けてほしい」ということだそう。着実にスキルアップしながら歩んできた自分自身の道のりがあってこその説得力を感じました。

ライター 
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