自分のペースで踏み出す「看護の道」の第一歩
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いわき市医師会附属いわき准看護学校 1年
佐藤 唯さん
小泉ひよりさん
佐藤 悠斗さん
Profile
「いわき准看護学校」の卒業生は例年3分の1近くが進学し、准看護師から看護師を目指す。教員は学生に1年次から「自分が進む道を早めに思い描いて」と伝え進路対策につなげているという。臨地実習が始まり、医療現場の雰囲気をつかみはじめた1年生に現在の心境などを聞いた。(写真左から佐藤唯さん、小泉ひよりさん、佐藤悠斗さん)
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クラスのみんなと支え合い、成長してきた1年間
ーーー入学のきっかけと、現在の学びで感じていることを教えてください。
(佐藤 唯)私が高校生の頃に祖父が入院して、その時の担当の看護師さんがとても優しくて、私たち家族のことまで気遣ってくれたので、「いつかは、あんな看護師さんになりたい」と憧れを持ちました。現在、学校の実習が始まったばかりですが、入院している患者さんの背中を拭いた時に「さっぱりした。ありがとうね」と言ってもらえたのがうれしくて、改めて看護の魅力や楽しさを知ることができました。
(小泉)高校入学後にコロナ禍があり、看護職不足が盛んに報道されていて、医療従事者になって患者さんを助けたいと思いました。准看護学校を選んだのは、2年という短期間で即戦力になれることが魅力的だったからです。学校生活はテストが立て続けにあって大変ですが乗り越えて実習に行けるようになったのがうれしく、これからもがんばろうと思ってます。実習先の看護師さんは、忙しい中でも私たちの成長を見守ってくれていて尊敬の念を抱きました。
(佐藤 悠斗)私は高校卒業後、医療依存度の高い利用者さんがいるデイサービスセンターに就職しました。全く資格がない状態だったので、現場でできる仕事に限界を感じるようになり、看護の資格を取得すればもっと利用者さんを助けることができると思い、1年働いた後に、この学校に入学しました。職場の人たちも応援してくれていて、引き続き職場に在籍し学校が休みの日にはパートで働いています。両立は大変ですが、クラスのみんなに支えられています。
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年齢や経歴、性別を意識しない「学びの場」
ーーーどんな看護師になりたいですか? また、進学を検討中の方にメッセージをお願いします。
(佐藤 唯)常に患者さんの気持ちを考え信頼してもらえる看護師になりたいです。私は23歳でこの学校に入学したのですが、実は高校卒業後に別の看護専門学校に入学しています。遠方の学校だったこともあってホームシックになって退学し、一度は看護師になる夢を諦めました。その後、別の仕事を経て、再び准看護師からチャレンジしているところです。この学校には、社会人経験者や子育て中の人など様々な人がいて、励まし合いながら学校生活を送っています。一度諦めた人や、迷っている人が夢に向かって一歩踏み出すには、とてもいい環境があると思います。
(小泉)技術や知識を確実に身に付けて、患者さんに寄り添える看護職になりたいです。卒業後は、いったん就職して病棟の勤務を経験し、その後、看護師の国家試験受験をするつもりです。私は、バイタルを測る手技のテストで手こずってしまったのですが、クラスのみんなが支えてくれたので、なんとか乗り越えることができました。どんなことも、できるようになると自信が付くのがわかったので、毎日の学びをしっかり積み重ねていきたいと思います。看護は、学ぶほどに奥深さ、やりがいを感じます。検討中の方には「一緒に学びましょう」と伝えたいです。
(佐藤 悠斗)患者さん、利用者さんや その家族の思いを汲み取れる看護職になりたいと思っています。また、デイサービス勤務の経験から、終末期の患者さんの最後の願いを叶えられる看護がしたいという夢があります。最初から「自分は向いていないから…」と決めつけずに、まずは挑戦してみることも大事だと思います。勉強も看護技術も、何度も挑戦し数をこなせば必ずできるようになります。クラスに男性は6人と少数派ですが、あまり年齢や性別を意識することはありません。この学校で「人に恵まれた」からだと思いますが、みんなが同じ目標を目指してがんばる学校生活は、思った以上に楽しいということを多くの人に知ってもらいたいです。
取材者の感想
最初の臨地実習は、学生さんにとって一つのハードルだそうですが、うまく乗り越えて次のステージに進めるように、「いわき准看護学校」では2年生が1年生にマンツーマンで実習前の心得を伝える「コミュニケーション学」というカリキュラムを独自に設けています。
今回取材した1年生たちも「記録の書き方など先輩に気軽に聞けたので安心して実習先に行けた」と話していました。少しでも先をいく人の経験談は、ささいなことでも役立ち、支えになります。「自分が得た知識を、惜しみなく必要とする人に伝える」ことの積み重ねが、看護に限らず人を育てるのだろうと改めて思いました。
ライター 齋藤真弓