INTERVIEW

看護師インタビュー

遠回りして見えてきた看護職という仕事の魅力

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公立双葉准看護学院 1年

髙橋建四朗さん

タカハシ タケシロウ

三浦昌俊さん

ミウラ マサトシ

Profile

これまで「女性の仕事」というイメージが根強かった看護職だが、男性が活躍できる場面は多く、実際にここ10年ほどで増えてきている。3回シリーズの最終回、公立双葉准看護学院の1年生として学んでいる男性二人に、看護師を目指したきっかけやこれからの目標などを聞いた。(写真左から髙橋建四朗さん、三浦昌俊さん)

  • 他職種を経験し看護資格取得を目指す男性二人

    ーーー入学したきっかけを教えてください。

    【髙橋さん】私は今26歳ですが、高校を卒業時する時には何をやりたいのかわかりませんでした。そこで、まず貯金をしようと自衛隊に入隊。社会人として揉まれながら身体に向き合い、整体に関心をもつようになりました。勉強のために自衛隊を辞めて学校に通い、リラグゼーションの会社に就職しました。その後、もっと深く身体を知りたくなって看護職を目指しました。

    【三浦さん】実は私は2回目の1年生です。以前は、建設現場などで重機を扱う仕事をしていました。「趣味は仕事」というくらいで打ち込んでいたのに、45歳で心臓の病気で外の仕事を続けられなくなってしまったのです。入院中、医療職の方たちに励まされて47歳でこの学校に入学したのですが、昨年2度目の手術をすることになって休学しました。今はすっかり元気です。

     

    ーーー入学してからの感想を教えてください。

    【髙橋さん】人間の体の仕組みは本当によくできているもので、学べば学ぶほどに奥が深くて面白いです。今学んでいる知識が医療現場でどんなふうに役に立つのかをイメージすると、自然と「もっと深く知りたい」「自分の知識を広げたい」という意欲が湧いてきます。

    【三浦さん】私はまるきり違う世界に来てしまいましたので、態度や言葉遣いの基本から徹底的に指導されました。これまでに身についたことを直すのに本当に苦労していますが、先生方はもっと苦労されているはずなので感謝しています。クラスは6人の仲が良く、和気あいあいと勉強を教えあっていて、男性の髙橋さんがいるから私も浮いたりせずに続けられていると思います。

  • 自分たちの経験は決して無駄ではないはずだから

    ーーーどんな看護師になりたいですか?

    【髙橋さん】医学的な知識にも詳しくて「この人に聞いたらなんでも分かる」「任せられる」看護師になりたいです。例えば、リハビリの先生から意見を求められる存在です。さらに、患者さんから質問された時に納得してもらえる答えができるように、これからもずっと勉強していきたいです。分野としては整形外科であれば、今までの経験が活かせそうな気がしています。

    【三浦さん】私の強みは患者の立場がよく分かることです。2年前、予想外の病気で仕事ができなくなって呆然としていた頃、医療職の皆さんが「大丈夫だから」と声をかけてくれたことが、どれほど励みになったかわかりません。今度は私が、つらそうな患者さんに笑顔になってもらえる看護をしたいと思っています。特にお年寄りは、どこかしら痛そうにしているので、老人保健施設などの看護師になって、少しでも辛さを和らげる関わりをしていきたいですね。

    ーーーもし看護職を目指す人に相談されたら、どう答えますか?

    【髙橋さん】准看護師の資格を取得で終わりではなく、看護職はずっと勉強が続きます。とりあえず資格を取りたいのであれば、時間の無駄かもしれないので、自分と向き合って覚悟することが必要です。ただ、自分に何が合っているのかはやってみないとわからないですから、遠回りになったとしてもいいのではないでしょうか。まずはやってみて、自分に合わないと納得することができればそれは無駄なことではないはずです。

    【三浦さん】僕はまだ説得力のあることを言えませんが、建設の仕事と違って、対人の業務は形が残りません。それでも患者さんに笑顔になってもらえた時の満足感、達成感ははかり知れないと思っています。そこに価値を見出すことができそうだったら、きっとがんばれるのではないかと伝えたいですね。

取材者の感想

髙橋さんも三浦さんも福島県外の出身。人との縁があって浜通りに移住し学生になりました。自分のやりたいこと、出来ることを見極めながら、周囲の助言に耳を傾けて今がある二人。クラスではムードメーカー的な存在になっていて、周囲に笑顔が絶えることはありません。この明るさと強さは、この先に患者さんにとって大きな支えになるだろうと思いました。

ライター 齋藤真弓