介護職から看護職へ今だからこそできる挑戦
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公立双葉准看護学院 1年
石川実穂さん
イシカワ ミホ
石田いづみさん
イシダ イヅミ
Profile
双葉町にあった双葉准看護学院は東日本大震災で休校を余儀なくされ、2017年に南相馬市で再開した。2021年度の1年生は6人。幅広い年齢層、個性豊かな顔ぶれの学生たちが、どのような思いで看護職を目指しているのか。3回シリーズの1回目は、介護職だった二人の女性を紹介する。(写真左から石川実穂さん、石田いづみさん)
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より踏み込んだケアをするために資格取得を
ーーー入学したきっかけを教えてください
【石川さん】入学前はデイサービスセンターで働いていました。介護職ができる医療的なケアには制限が多いので、もどかしく感じることが少なくありませんでした。昔から看護職に憧れはあったのですが、自分には無理かもしれないと思い踏み出せずにいました。一番大きなきっかけは、看護師だった祖母が亡くなったこと。直後に、3月に告知されていた公立双葉准看護学院の二次募集を目にして、40代で入学することを決心しました。
【石田さん】私は40代半ばから5年間訪問介護事業所で働いていました。石川さんと同じように介護の仕事を続ける中で、もっと踏み込んだケアをしたいと思うようになり看護の資格を取ることにしました。50代になって子育てが終わり、今なら自分が好きなことができると思いました。
ーーー授業についていくのは大変ではないですか?
【石川さん】勉強は介護福祉士の資格を取って以来なので、正直大変は大変です。循環器・消化器などの医学的な科目は苦戦していますが、基礎看護技術などの授業は介護に通じる部分があり、今までの経験を活かすことができます。
【石田さん】若い人たちに負けない気力はあっても集中力が続かないし、記憶力に不安はあります。一生懸命に教えなくちゃならないと頑張っている先生の姿を見ると、私も一生懸命学ばなければならないと思います。でも、若い人の輪に入れないのではないかという心配は無用でした。少人数なので結束力があって、勉強を教え合い助け合える雰囲気があります。この学校は自分が入りたくて入った学校なので、家に帰ってからも必死に勉強をしています。
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「自分らしさ」を活かした看護をしていきたい
ーーーお二人は、どんな看護師になりたいと思っていますか?
【石川さん】入学前に働いていた職場から「ぜひ戻っておいで」と声をかけてもらっています。歴代の所長は当学院の出身者ですし、介護現場でも看護職が必要とされています。2年後に介護施設と病院のどちらで働くようになるかわかりませんが、いずれにしても「愛嬌のある看護師」になりたいと思っています。私がベテランになる頃には高齢になっているはずですが、多少動きがスローになっていても、周りを明るくできるような存在になれたらいいですね。
【石田さん】私は人とコミュニケーションを取るのが好きなので、それを仕事に生かせればと思います。訪問介護の仕事に就くまでは、25年ほど大型ダンプやバスの運転をしていました。南相馬市に長く住んでいますので、お年寄りの昔話に共感することができますし、人生経験を活かした自分らしい看護ができればいいなと思っています。
ーーー入学を迷う人がいたら、どんなアドバイスをしますか?
【石川さん】「迷っている」と言いながら誰かに相談する時は、その人は看護職をやってみたいのだと思うのです。誰かの一言が背中を押すのだとすれば、私は積極的に「挑戦してみたら?」と言いたいですね。まずはやってみて、ダメだったらそれは仕方がないのです。人生は後戻りできないということはありません。私のことで言うと、若い頃だったらへこたれていたかもしれないけれども、年齢を重ねて打たれ強くなった今だからこそできることがあると思っています。
【石田さん】在学期間が短くて、最短2年で資格を取得できるカリキュラムは魅力的です。家庭と勉強の両立はそれほど簡単なことではありませんが、夫にも「2年だけだからがんばらせて」と言っています。クラスメイトと助け合い励まし合うことで乗り越えていけると思います。
取材者の感想
年齢を重ねるほどに新しい挑戦には勇気が必要ですが、「今の年齢になったからこそできる」と入学を決意した二人の言葉は前向きで迷いがありません。「勉強が大変で」といいながら、その状況を楽しんでいるような余裕さえ感じられる姿は同世代の私にとって大いに励みになりました。「これからの人生で今が一番若い」という言葉を思い出しながら、看護職を目指す二人にエールを送りたくなるインタビューでした。
ライター 齋藤真弓