看護を学び続けることで人としても成長できる
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医療法人 伸裕会 渡辺病院 看護部マネージャー
阿部 佐保さん
アベ サホ
Profile
南相馬市原町区出身。国立療養所東京病院附属看護学校卒業後、国立がんセンターに4年間勤務。1999年、結婚を機にふるさとに戻り、渡辺病院に入職した。病棟勤務を経て、南相馬市原町区から新地町に病院が移転した2015年以降は外来を担当。高校生の娘が二人いるお母さんで、長女はこの春から看護大学への進学が決っている。
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患者さんの心と身体に寄り添うために必要なこと
看護師になることを決めたのは高校生の時です。祖母が認知症になり家族が大変そうだったので「何か力になれることがないかな」と思っていた頃、先生に看護学校への進学を勧められました。憧れや夢があったというより、職業として「看護師もいいかな」と感じたこと、また、国立の学校で親に負担をかけずに進学できるからという現実的な選択でした。それでも実際に看護師になってみると、自分には合っていたようで、長く続けてくることができました。
新卒で就職した国立がんセンターは最新の治験なども行う特殊な医療機関です。最初は分からないこと、できない仕事が多くて、日勤の時間帯に仕事が終わらず、次の夜勤が来るまでずっと病院にいたこともあります。現在の当院では考えられない勤務状態ですが、この4年間に多くを学びました。若くしてがんになってしまった患者さんとの関わりが難しくて「どう声をかければいいのだろう」と悩んだこともあります。がんに限らず、病気になった場合には、そっとしていてほしい時もあれば、そばにいてほしい時もあって、人によっても違います。私の想像と患者さんの本当の気持ちが違うこともあると思います。それでも患者さんと家族に「寄り添う看護をしたい」というのが、今も変わらずに持ち続けている私の看護観です。患者さんの心と身体に寄り添うには、「やさしさ」だけではなく、スキルアップが欠かせないと思っています。
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チームで取り組む看護の楽しさを渡辺病院で
看護は毎日が学びですが、広い視野と新しい知識を得るためには、外部の研修に参加することも効果的です。当院では希望する院外研修を日勤扱いで、費用も全額負担した上で送り出してくれます。今年度私は「リフレッシュ」の研修を受けました。笑うことの効用や、声のかけ方で気持ちが切り替わることなどを聞いて改めて納得してきました。この院外研修だけでなく、家庭の事情で休まなくてはならない時も看護職同士が「お互い様」とやりくりする雰囲気が浸透しています。職員がお互いを思いやる気持ちは、患者さんへの「やさしさ」にもつながっていくと思います。
看護師の仕事は一方通行ではなく「常に相手がいる」のが大きな特徴です。もしも、相手の反応が良くなかったら「どうすればいいのか」考え続けることで、人として成長することができると思います。ただし、自分一人で考え続けるのには限界があって、チームとして複数で知恵を出し合うと突破口が見えてくることもあります。「悩む」ことにはネガティブなイメージがありますが、みんなで「患者さんに、いい看護をしたい」と同じ方向を向いて悩み関わっていくことは、実は、とても楽しいことです。全員で考え全員で支え合う…それが当院の仕事観でもあります。みんなの話を聞きながら、一緒に悩んで答えを見つけ、私自身もっと成長して行きたいと思っています。
取材者の感想
現在、阿部さんは、マネージャー業務のかたわら、内科、外科、消化器内科、整形外科、専門外来、救急外来の他、訪問看護まで、幅広く看護スタッフとしても加わり患者さんと接しています。現在、切望しているのが「看護スタッフのさらなる増員」。「人員不足のため力を入れることができない訪問看護に、今とても需要があると感じています。病院にカルテがあると訪問看護でも主治医がすぐに対応できるなどのメリットもあります。また、地域の方に安心して入院生活を送っていただくためにも、やはり看護師の確保が喫緊の課題です」と阿部さんは話します。2014年に出来た新しい建物は機能的で明るく、なによりもスタッフの皆さんの笑顔に心がなごむ渡辺病院。「百聞は一見に如かず」で関心のある方は一度、見学の申込みをしてみてほしいと思いました。
ライター 齋藤真弓