INTERVIEW

看護師インタビュー

患者さんのため、地域のため学び続ける

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公立相馬総合病院 看護部 がん化学療法看護認定看護師

佐々木 達也さん

ササキ タツヤ

Profile

1981年青森県生まれ。転勤族の両親と共に全国各地に住み、仙台市の高校へ。相馬看護専門学校へ進学後は、仙台市の自宅から電車で通学した。2004年に公立相馬総合病院に入職し、現在は南相馬市在住。奥様は地域包括支援センター勤務の保健師。夫婦それぞれの立場から「地域に根ざした医療」について話しあう機会も多いと言う。

  • 相馬看護専門学校の「一期生」

    通っていた高校は進学校で、周りは大学を目指す人ばかりでした。私は進路を決める時期になっても目標が定まらず「進むべき道のヒントが欲しい」と様々な職業にまつわる本を読んでいました。そんな時に出会ったのが、看護師である宮子あずささんのエッセイ。仕事を通して多くの人と真っ直ぐ向き合い、学びながら成長するエピソードが興味深く、人と関わるのが好きな自分に「看護師という選択肢がある」と気づかせてくれました。

    高校卒業後は、相馬看護専門学校に入学。新設校で設備が充実していることや、一期生として自分たちで校風を作っていけることなどが魅力的でした。もとより生物などの理系が大好きで「生理学」などはすんなりと頭に入り、勉強面での苦労はありませんでした。

    卒業後は公立相馬総合病院に入職。それからの毎日は無我夢中、あっと言う間でした。勤続10年を数える頃、当時の看護部長に「認定看護師を取得してみないか」と声をかけてもらいました。当時、外科病棟に所属していた私は、がん患者さんに関わる機会が多く、化学療法に詳しい看護師が必要だと痛感していました。また看護師としての「強み」が欲しいという気持ちがあり「がん化学療法看護認定看護師」を取得することにしました。

  • 住み慣れた地域でがん治療を

    化学物質によってがんの増殖を抑え、がん細胞を壊す治療が「化学療法」です。「がん化学療法看護認定看護師」は、抗がん剤治療を受ける患者さんや家族に治療内容や副作用について詳しく説明し、副作用をコントロールできるようにサポートしていきます。

    7ヵ月ほど学んだ認定校の「静岡がんセンター」は、最先端の化学療法を行う病院で、経験豊富な看護職がたくさん学びに来ていました。当院は大学病院に化学療法を委ねることが多かったため、私の知識量は圧倒的に不足していました。

    そこで私は「理解したつもり」で終わらないよう、一緒に学ぶ人たちに「こういうこと?」と常に確認するようにしていました。また、当院に化学療法室を新設することが決まっていたので、他の病院の取り組みを詳しく教えてもらって、よい部分は参考にできるように心掛けました。

    化学療法を専門にする人は勉強家が多く、熱心に詳しく教えてくれる人が少なくありませんでした。私だけでなく、新しい情報があると「なに?それ、教えて」とお互いに伝え合い、盛り上がるのです。いずれにしても「分からないこと」が「分かる」のはとても楽しい経験だと改めて感じました。さらに、それが患者さんにとって役立つなら、なおさら熱心になります。

    2015年に化学療法室が出来て、当院で化学療法ができる患者さんの数は約2倍に増えました。がんと診断される患者さんが増えるに伴い、化学療法を必要とする患者さんも増えています。住み慣れた相双地域で治療が継続できるようになれば、国が進める地域包括ケアの実現にもつながっていくはずです。今、私が目指しているのは、患者さんが不安や疑問を気軽に相談してくれる看護師。自分が得た知識を患者さんに返し、また医療スタッフとも共有しながら「地域に根ざした看護」をこれからも続けていきたいと思っています。

取材者の感想

佐々木さんの原動力は、「みんなから頼りにされる存在でいたい」という気持ちだそう。「たからこそ、勉強も仕事もがんばります。少しずつレベルアップすれば出来ることが増えますし、人の輪が広がります。これは看護師に限らず、あらゆる仕事をしていく上での醍醐味だと思います」。

公立相馬総合病院に勤務して14年。現在は外来による化学治療の他、病院内での勉強会やミニカンファレンスなどを通して、「誰かに教える機会が増えている」と言う佐々木さん。「人と関わるのが好き」という親しみやすい個性や対応力は、包括的・横断的に患者さんに寄り添うケアが求められる現在、看護職としての大きな強みになりそうです。

ライター 齋藤真弓
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