公立双葉准看護学院が4月に南相馬市で再開
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公立双葉准看護学院 学院長
堀川 章仁さん
ホリカワ アキヒト
Profile
1948年南相馬市原町区生まれ。内科医。福島県立医科大学卒業後、福島県立医科大学勤務を経て、1991年富岡町に夜の森中央医院を開業。2007年より公立双葉准看護学院の学院長を兼務。今年3月末まで富岡町大玉仮設診療所などで診察を行う。
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相双地区の看護師不足解消に向けて
今年4月から公立双葉准看護学院が南相馬市で再開します。東京電力福島第一原発の事故により休校を余儀なくされてから6年の歳月が経ちました。私自身は、10年、20年先まで再開はないだろうと思っていたので、「思いのほか早かった」というのが正直な気持ちです。
国は、以前から「准看護師育成校の新規開設はしない」という方針を打ち出しています。一度閉校してしまうと再開はできないだろうということで、休校で継続に望みを残してきたのです。
現実を見てみると、緊急時避難準備区域が解除されても帰還した住民は15%にとどまっています。若い世代が放射性物質の影響を心配して戻らないので、福島第一原発近くにある双葉郡内で学生を集めるのは難しいでしょう。また、これまで以上に教員や実習病院の確保も困難です。
一方で、相双地区では深刻な看護師不足が続いています。特に南相馬市はスタッフの数が揃わないために、入院患者を制限している病院が少なくありません。また、新たに人口透析を開始するために患者が他県の病院まで行かなければならないほどの切羽詰まった状態になっています。これから数年で他県から応援に来ている看護師が帰ってしまうと、さらに人手不足が加速するはずです。
これらのことを踏まえ、南相馬市、相馬市の協力を受けて『公立双葉准看護学院』を南相馬市で再開し「看護職の確保」を目指すことになりました。もとより、震災前から相双地区から通う学生が半数以上いて、双葉と相馬の地域の枠を超えた養成校でもあったのです。
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「震災を契機に得た思いがある」学生たち
2年で資格が取得できる准看護師は即戦力として期待されています。中学卒業以上であれば入学資格があるので正看護師に比べ多くの人が看護職に挑戦できるという側面もあります。来年度の入学予定者のほとんどは高校卒業者ですが、大学卒業者もいます。世代も幅広く最年長は58歳です。
もちろん、卒業後に正看護師を目指して進学することもできます。これまでは卒業生の約半数が進学していました。そうすると「即戦力の育成」にはならないかもしれませんが、長い目で見て看護師を増やすことにつながるのは間違いありません。スタートラインはたくさんあった方がいいのです。
看護師の皆さんには、「病める人の心を包める力」をもってほしいと思います。それは一朝一夕に身に付くものではありませんが、今回入学する学生さんの面接を通して強く感じたのは、「震災を契機に得た思いがある」ということです。看護職を目指す方それぞれが持っている「人の役に立ちたい」という気持ちや自分自身が「こういう人間でありたい」という心を大切に育てていきたいと思います。
取材者の感想
吹雪の日に大玉村の仮設診療所に堀川先生を訪ねると、数人の患者さんが待合室にいました。不思議に感じたのは、世間話をしながら診察を待つ人たちの表情が明るいこと。診察室から出てきた患者さんの表情は、さらに柔らかくなっています。取材してすぐにその謎は解けました。
「患者さんは私という鏡を通して自分を見ているのです。私が笑顔になれば相手も笑顔になる。つまらない顔をしていたら相手もつまらないでしょう?」と堀川先生。「聴診器を当てるだけじゃなくて、いつもと違う様子だなと思ったら相談に乗ります。でも、お金の話だけは、私じゃあ難しいんだけどね」と笑いを誘い、インタビューしやすい和やかな雰囲気を作ってくれました。
堀川先生自身も避難生活で仮住まいを続けています。「避難している人はみんな心に傷を負っています。その傷は、癒えるどころかまた最近になって大きくなってきている可能性がある。同じ経験をしたからこそ、心の内を聞き出すこともできるし、共感できるのだと思います」とのこと。そういう意味でも「私たちと同じ境遇の人たちに、看護師などの医療人を目指してほしい」と堀川先生。穏やかな口調のなかに、大きな使命感を感じました。
ライター